淡路島岩屋漁業協同組合

岸本保さん

Interview

インタビュー

”食の宝庫”淡路島を支える生産者たちの
熱い想いをご紹介します。

港でしか味わえない四季折々の旬の魚を楽しんでほしい

淡路島岩屋漁業協同組合 岸本保さん

明石海峡大橋のたもと、淡路島の北の玄関口に位置する岩屋漁港。毎日、新鮮な魚が水揚げされています。この海を仕事場にして40年、岩屋のベテラン漁師である岸本保さんは、実は淡路島の名物である「生しらす」の火付け役でもあります。

「生まれも育ちも淡路島。実はまだ一度も島から出たことがないんですよ(笑)」。通信制の学校に通いながら、16歳で漁師の道を歩み始めた岸本さん。家業が漁師だったので、小さな頃から将来は自分も船に乗るのだろうと自覚していたそうです。養殖ではなく、人間がコントロールできないため、漁獲量は時期によって異なるのが漁業の難しいところ。それでも岸本さんは「多い時期もあれば少ない時期もあるので、安定はしていませんね。でも、その山あり谷ありが面白いところで、何より自然に任せて楽しんでいます」と笑って話します。

魚の種類も漁の方法もさまざま。現地でしか出会えない魚も

岩屋の漁場は、同じ海域の中にも潮流の早いところや穏やかなところ……というように、場所によって特徴が異なります。そのため水揚げされる魚の種類もさまざまで、漁師がそれぞれにオリジナルで網を作るなど、魚と向き合う方法は十人十色。しらすやイカナゴを獲る船曳、タイやタコを獲る底曳網、アナゴやフグを獲る延縄をはじめ、建網、釣り、アワビやウニを獲るホコ突き漁など、獲る魚に合わせて多様な漁法が発達してきたのも岩屋の特徴です。

季節の魚を楽しめるのも淡路島ならでは。春はいかなごから始まり、タイ、しらす、夏はスズキ、キジハタ、アジ、秋はトロサバ、サワラと四季折々の魚たちが市場に並びます。現在では流通技術の改良によって安定した供給が実現したため、どこでも食べられる魚が増えましたが、淡路島に来ないと出会えない魚もたくさんあります。「ここにはとにかくいろんな種類の魚が揃っています。秋のサワラなんてすごく美味しいんですよ。地元の魚を使っているこだわりのお店もあるので、ぜひ季節ごとに現地に来ていただければと思います。意外な魚を食べられるかもしれません」。

漁師+飲食店の地元の協力が「生しらす」ブームを生んだ

中でも岩屋漁港の一押しは「生しらす」。今や淡路島の名物となっていますが、そのきっかけは2011年。岸本さんが理事を務める岩屋漁協と地元の観光業者らでつくる北淡路地域ブランド推進協議会を中心に「島の生しらすプロジェクト」が発足。地元飲食店と協力し、岩屋港で水揚げされた鮮度の高い生しらすを用いた料理の提供が始まりました。「昔は今みたいに冷蔵・冷凍の技術がなかったので、水揚げしたての鮮度を保つのが難しかったんです。でも、淡路島島内だと漁場も近いので早く運べます。その利点を生かし『ええもんを生で食べてもらおう』と」。淡路島に来ないと食べられないというレア感が受け、現在では参加店舗も倍以上に増えました。このアイデアのヒントになったのは、毎年淡路島に春の訪れを告げるいかなごだったのだそう。昔からくぎ煮を売る店が多く、量よりも鮮度が大事とされていました。「質を重視する文化がありましたね。その流れを汲んでいるから、生しらすも浸透しやすかったですね」。

岩屋漁協組合の現在のメンバーは200名ほど。明石海峡大橋が架かった頃は500名弱が在籍していたが、高齢化が進んでいます。「若い漁師も活躍してくれていますが、全体的な人数は減っています。何とか漁業のバトンを未来へ繋げていきたいですね。こんなこと言っている私もまだまだなんですよ。先輩たちはみんな海のことだけを考えています。海で生きてるんですよ。これからも見習っていかないといけませんね」。