若男水産株式会社

前田 若男さん

Interview

インタビュー

”食の宝庫”淡路島を支える生産者たちの
熱い想いをご紹介します。

冬の名物「淡路島3年とらふぐ」誕生の秘話

若男水産株式会社 前田 若男さん


淡路島を代表する冬の名物として、すっかりそのイメージが定着している「淡路島3年とらふぐ」。その養殖の歴史は約40年前、前田若男さんのお父様の代から福良湾で始まりました。「最初はものすごく難しかったですね。大きくなるまでにほとんどが死んでしまうので、当初の生存率は10〜20%くらいでした。でも、フグは見ていて可愛いし、餌をあげていても面白いので、なんとか続けることができました」と前田さんは話します。

育てるのが難しい「3年もの」への挑戦

一般的に養殖のトラフグは2年で出荷されていますが、淡路島のトラフグは「3年もの」。若男水産でも養殖を開始した当時は2年目で出荷されていましたが、福良湾は水温が低く、中には成長が遅いトラフグもいたため、3年目で出荷することもありました。潮の流れが速い鳴門海峡の近くで、3年間じっくりと育てられたトラフグは、2年ものの約2倍の大きさになり、身がギュッと引き締まって味も濃厚になります。「3年もの」の需要を感じた前田さんは約10年間の歳月を費やし、トラフグの生存率を上げるために試行錯誤を重ねました。

餌の管理をはじめ、気候に応じた対策を講じたり、生簀内の他のフグを傷つけないように定期的にフグの歯を切ったり、さまざまな工夫を凝らしています。「もちろん、2年より3年の方が育てることは難しいです。生存率もグッと下がりますからね。2年で売る方が費用対効果はいいかもしれませんが、何より3年ものは美味しいんですよ」。



輸入品には負けない!淡路島の美味しさをブランド化

ところが、2000年頃のこと、ようやく「3年もの」のトラフグの実績が上がってきた矢先、中国産のフグが安値で輸入されるようになり、前田さんは養殖業の存続も危ぶまれる状況に陥ってしまいます……。「自分たちの作っている「3年もの」はこんなに美味しいのになぜ売れないのか?と悩んだ末、『淡路島3年とらふぐ』という名前をつけてブランド化をすることに決めました」。

輸入品と差別化を図るため、淡路島で3年育成された1.2kg〜1.8kgの大きさのトラフグを「淡路島3年とらふぐ」と銘打ち、売り出すことに。すると、島内の旅館やホテルを皮切りに徐々に認知されるようになりました。現在ではテレビや新聞など数多くのメディアで紹介され、淡路島の冬の味覚を象徴する存在となりました。


自分たちの作ったものの価値を自分たちが理解する

若男水産は、生産から加工・販売までを一貫して自社で行う「直売」をしています。養殖業の中では非常に珍しい形態です。直売をすることによって、流通や加工に関わるコストをカットできるため、お客様に良い商品をより安価で安心に提供することが可能です。「食べ方は、シンプルに、定番のてっちり、てっさ、唐揚げがおすすめです。そして、骨から出汁がたくさん溶け出た〆の雑炊。これが一番ですね」と自信を持って語ります。

前田さんが直売にこだわるのには理由があります。それは、自分たちの育てたトラフグを自分たちで加工するからこそ、その質を自分たちでしっかり確認することができるからです。「他人任せではなく、自分たちで価値を理解した上で、商品の値段をつけることができます。最近は餌代なども高騰していますが、私たちは美味しい『淡路島3年とらふぐ』を作るために絶対に妥協はしませんよ。ぜひ一度食べてみてほしいですね。そして、またリピートしてくださったら嬉しいです」